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選ぶ前に飛べ!
2009/11/23(Mon) 01:20:06

選ぶ前に飛べ(天使のお仕事)


今日もまた、俺は上から人間を見下ろす。上から目線、とかなんとか言われてもしょうがない。実際上にいるのだから。
「だいたい人間は深く考えすぎなんだよな」
本日見届けたのは熟年離婚だった。
俺たちは人間の生死じゃなくて、恋愛とか結婚とかの色恋沙汰を扱う課に所属している。生死を扱う部署の天使からは、あの部署のやつらは軽いなんて言われたりもする。
でも俺は思うのだ。死ぬよりつらい失恋もあるし、生きる勇気になる愛だってきっとある。なんてね。
「まー、そこが人間の人間たる所以だけどね」
「なに難しいこと言ってんだよ、お前今日の昼飯なににするか考えたのかよ」
また俺が選ぶのかよ!と、健は不満を口にする。このあたりはあまり店がなくて、いつも昼飯のメニューを選ぶのに苦労する。2軒ある定食屋か、イタリアンかコンビニ。時々は人間のフリして地上で食べたりもするのだけれど、降りたって結局食べるのは同じような物だ。
天使も人間もそう変わりゃしないのだ。
たかが昼飯、されど昼飯だ。だけど迷ったときはいつも「選ぶ前に飛べ」と言うことにしている。これは俺たちの間で最近流行っているフレーズで、俺が考えたのだった。生きていると(俺たちが生きているかどうかというのはまた難しい質問だが)どうしてもつい飛ぶ前に選んでしまいがちだが、あれこれ考えて選ぶ前にまず跳ぼうぜって意味で、要するに昼休みの時間がもったいないから早く決めて早く食おうってことだ。
ちなみに、俺たちの間で流行っている、と言ったけれど実は俺の中で流行っているだけかも知れないということに、うっすら気づきつつもある。

結局、今日の昼飯はコンビニで買ったパンを持って、適当な雲の上で食べることになった。今日は天気も良くて気持ちがいい。雲の上に来ればいつだって天気は良いのだけれど、下も天気がいいほうがやっぱり気分が良い。雨雲は座るとき湿ってるし。
(健は湿り気のある雲に座るのをとても嫌がる。かく言う俺もあんまり好きじゃない。)

「さっきの離婚さあ、どうにかならなかったんかな」
たまたま昼飯で一緒になった岡田が言う。コンビニでばったり会ったので、一緒の雲で食おうと誘ったのだった。
岡田は俺たちの中で一番若く、そして一番大人びている(と俺は思う)。天使になったのも一番最近だが、もともと何でもソツなくこなすタイプらしく、仕事の覚えはかなり早かった。今ではこのチームのリーダーの坂本君とペアを組んで、坂本君並みに、ひょっとしたら坂本君よりもバリバリと仕事をこなしている。その坂本君は岡田の隣に座り、野菜ジュースのパックにストローが刺さらないようでさっきからずっと苦戦している。この男は基本的に天然である。

俺が、
「しょうがねぇだろー、本人たちの意志は固かったし」
と言うと、岡田はもごもごとベーグルを飲み込みながら、ううーんとかなんとか、返事ともなんとも判別の付かない声を出した。
「ま、天使も楽じゃないってことですな」
ようやくストローを使って野菜ジュースを飲めた坂本くんがあまりにもオッサン口調で話に割り込んできたので一応注意しておく。
「ちょっと、いまのすごいオッサンっぽいよ」
「だって俺オッサンだもん」
「俺たちは仮にも天使なんだからさー」
天使っつたってねぇ、と坂本くんは呟く。健がうんうんと頷きながら、
「扱ってんの、熟年離婚だもんねぇ」
と苦笑いみたいな感じで笑いながら二つ目のパンを頬張った。焼きそばパンだった。
全くなあ、あれだけ長いこと連れ添ったのに、そりゃないよなあ。俺もそう思うけど、でも奥さんの言い分もわかるしなあ。
みんな口々に感想を述べ合った。パートのおばちゃんの昼休みみたいだなぁと思って、ちょっと情けないなあと思って笑った。
「あ、でもこの後いい仕事じゃん?」
坂本くんが午後の予定表を取り出して、こっちにひらひら見せながら
「ほら、片思いの中学生。告白するっぽい」
「お、いいねー。おれたちは何だっけ」
健に聞くと、ちょいまって、と言ってポケットからがさがさ予定表を取り出して渡してくれた。
「あ、こっちもいい感じだ。遠距離恋愛の社会人。プロポーズ」
「オッケーするかな?」
「どうだろうね~」?
「相手も社会人?」
「んとねー、いや、彼女のほうは大学生だ」
「えー、じゃあプロポーズは早い気もするけどなあ!」
俺たちはひとしきり盛り上がって、それから昼休みがあと少しなことに気づいたので慌てて立ち上がる。ひざにくっついたパンくずを手で払った。
「そんじゃ、いきますか!」
「おう」
坂本くんと岡田は中学生の告白へ向けて、その舞台になる中学校目指して文字通り飛んでいった。
「俺たちも行きますかっ」
健が言うので、俺はおう、と返事しながらふと思いついて付け加える。
「そんじゃ今日も、選ぶ前に飛んじゃう感じで!」
ラジャー!と振り返った君は今日一番の笑顔だ。
思わず、健ちゃん天使みたい、と言おうとして、ああ俺たち天使だったと思って笑った。

 


なんかよくわからんが書きっぱでおいてあったやつ/ 井・健・坂・岡
いのながペアの、羽根はえちゃう話とは関連がありません(笑)

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